季刊[はちのへ中心蔵ウェル]

チーズとワインのマリアージュ [ well vol.94]

チーズとワインのマリアージュ

高森
2019年2月号からスタートして丸3年。皆様に支えられながらチーズとワインに向き合ってまいりました。今号で、早狩店主との連載は最終回です。ご覧いただきましてありがとうございます。早狩さん!最後のとっておきチーズのご紹介お願いします。

早狩
2012年、MONS熟成チーズと出会いました。
フランスの知人から一人のM.O.F.(フランス国家最高職人)チーズ熟成士を紹介されました。
エルヴェ・モンス
『チーズデイ』のチーズの大半はモンスさんの手による熟成チーズです。初めて食べたとき、モンスのチーズは一味違いました。最高の食べ頃を迎えるための熟成がほどこされ、味わい、香り、余韻、どれも自分好みの味でした。
今回は最終回なので、ぼくの大好きなモンスのチーズを紹介します。

一つ目は、モンスさんも大好物の『サンネクテール』です。サンネクテール専用の熟成庫を持つほどで、子どものときに食べたサンネクテールの味を後世に伝えるべく守り続けているそうです。外皮はグレーでビロードのような柔らかいカビをまとい、むちっとした食感、ふくよかな香り、地味ですが、ミルクのおいしさを実感できます。

もう一つは『1924』という不思議な名前のブルーチーズ。かの有名なブルーチーズ、ロックフォールと同郷です。1925年、ロックフォールがAOC認定され大人気になる前から地元民に愛されてきたチーズを再現しました。ロックフォールが羊乳100%なのに比べ、『1924』は羊乳と牛乳が半分半分、見た目はグレーがかった黄色で、外皮もいろいろな色のカビが生えて強面ですが、なかなかの美味。一度食べたら忘れられず、ご指名いただくこともしばしば。1842とか1953とか4桁の数字をいろいろ言われますが、『1924』ですので、お間違えなく。
どちらもお店で見つけたら、ぜひ一度試してみてください。

高森
シェフと試食してみました。もちっとではなく、むちっとした食感! わかります! 弾力があるんですね。
香りや味わいは優しいタイプです。このタイプにはフルーティーな白や軽い赤ワインがいいですね。チーズとワインの風味を調和させるペアリングです。

次は『1924』。牛、羊乳を混ぜ合わせたチーズですね。こちらは熟成のねっとりとした食感! 青カビの刺激はありますが、混乳の為でしょうか、食べやすいですね。そのままでしたらローヌ南部の赤ワインです。シャトー・ヌフ・デュ・パプが有名です。
グルナッシュ種、シラー種、ムールヴェードル種から造られる赤ワインは色が濃く、黒系果実の風味に加えてタンニンも非常に多い、複雑さを発達させることが出来るスタイルです。
オレンジマーマレードやはちみつと一緒に召し上がるのでしたら貴腐ワインのソーテルヌでしょう。塩味にとろける甘さのジャムとワイン!口中に旨味が溢れます。

ワインが料理の味を高め、料理がワインの味を高めます。味覚の相互作用や風味の調和や対比によってペアリングは成立します。
もちろん感覚や好みは人それぞれ!どの料理とどのワインがベストマッチかという問いに対するシンプルな答えは存在しません。これからもその答えを導き出せるようワインと向き合いたいと思います。
チーズとワインのマリアージュ。素晴らしい機会を与えて下さりありがとうございました。

文/『八戸パークホテル』ソムリエ 高森 亘 / 『CHEESE DAY』店主 早狩昌行幸